special interview

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東儀秀樹/雅楽師

1959年東京に生まれる。
東儀家は、奈良時代から今日まで1400年間雅楽を世襲してきた楽家である。

父の仕事の関係で幼少期を海外で過ごし、ロック、クラッシック、ジャズ等あらゆるジャンルの音楽を吸収しながら成長した。高校卒業後、宮内庁楽部に入る。 楽部では篳篥(ひちりき)を主に、琵琶、鼓類、歌、舞、チェロを担当。宮中儀式や皇居において行われる雅楽演奏会などに出演するほか、海外での公演にも参 加、日本の伝統文化の紹介と国際親善の役割の一翼を担ってきた。その一方で、ピアノやシンセサイザーとともに雅楽の持ち味を生かした独自の曲の創作にも情熱を傾ける。

> 東儀秀樹オフィシャルサイト

様々な楽器の輪郭やポジションもはっきりしています。 すごい作りだと感心しました。

−− 現在、Piano Forte Xをお使いいただいていますが、印象はいかがですか?

東儀 音がきらきらしていますね。それに、細かいところまで全て再現できています。きらきらとした音の製品は、反対に温かい低音が削がれてしまうことがよくあります。ですが、この製品にはそれがありません。

−− どのような音楽を聴かれての感想ですか?

東儀 どんなジャンルでも聴くのですが、やはり自分の音楽だとよくわかりますね。自分だけが知っている原音がそこにあるからです。それがどれだけ再現できているかは、ひとつのバロメーターになります。たとえば、雅楽で使われる楽器、笙(しょう)や篳篥(ひちりき)の音の感覚や、バックバンドとのバランスなどですね。また、ピアノが好きで、自分でも弾くので、ピアノも参考にします。良く言うんですが、求めているのは「温かくて涼しい音」なんです。

−− 不思議な表現ですね。

東儀 静かで、ひんやりしているんだけど、温かい音で耳に入ってくるような感覚です。フランスのジャズピアニスト、ジャック・ルーシェの「G線上のアリア」の冒頭の部分だけ聴けば、その製品が良いか悪いかわかるんです。他にも、イ・ムジチ合奏団の「ブランデンブルク協奏曲」や、レゲエのボブ・マーリーなども再生してみました。あとはピンク・フロイドの『狂気』や、ヴァン・ヘイレンなども聴きますね。

−− 80年代のハードロックをお聴きになるとは意外でした。

東儀 ヴァン・ヘイレンのギターのコード感には、なんとも言えない温かさがあるんです。ハードロックなんだけど、安心感のある、角の丸い音です。

−− それをこのイヤホンでもお感じになりましたか?

東儀 そうですね。それにバランスも良いと思います。ただ、ミュージシャンにとって恐ろしいのは、演奏の粗も全部聴こえてしまうこと。コードの濁りや、演奏時点での問題なども目立つかも知れません。

−− レコーディングスタジオで聴いているような音に近いと……。

東儀 そうですね。切れ味も良く、透き通っていて音が全て見通せるようです。特にこのPiano Forte Xは、オープンエアーのヘッドホンで聴いているような感覚にもなります。それでありながら、低音も欠けることなくバランスも良いと思います。また、様々な楽器の輪郭やポジションもはっきりしています。すごい作りだと感心しました。ボディはやや大きいですが、その音にするために必要だったんだろうと想像しています。初めて手に取ったときには、重いと思いました。しかし、イヤホンに音の良さを求めている僕らにとっては、着けた瞬間、そのことはすっかり忘れてしまいます。イヤホンだと思って持つから、重く感じるだけで、良い音のする機械だと思えば全く問題ないでしょう。

−− イヤホンのこれまでの概念を超えるような発想ですね。

東儀 イヤホンは軽くなければいけない、というのではなくて、良い音でなければいけない、という人にとっては重い物ではないはずです。だから、新幹線などでの移動の際にも使ってみたいですね。ゆったりとしたリスニングルームにいるような感覚を味わえると思います。

「ここまでやるか!」と思えるこだわりは 素晴らしいですね。

−− ところで、東儀さんといえば、クラシックカーやモーターサイクル、カメラ、乗馬など、幅広い趣味をお持ちです。それは、本物を常に追い求めている姿にも思えます。そのような視点からこれらのイヤホンに接してみて、いかがですか?

東儀 趣味の世界への入り口は様々です。レプリカを面白がるところから始まる趣味もあります。でも、それに触れている間に、やはり本物はどうなんだろう、本物はきっとこうに違いない、などと思い始めるんです。一種の向上心ですね。それで本物を手に入れると、そこにはやはり本物の価値があることに気づきます。「いいもの欲」と僕は言っていますが、良い物に対する欲を失ってはいけないと考えています。その意味でも、そうした「いいもの欲」を、十分に満たしてくれる製品だと思います。

−− 削りだしの金属を使ったボディや、ずっしりとした重量、またイヤーパッドを装備していないことなど、これまでのイヤホンの常識を飛び越えています。その考え方についてはどう思われますか?

東儀 「ここまでやるか!」と思えるこだわりは素晴らしいですね。常識を覆すような、例えばスティーブ・ジョブズのような人が、今、少ないなと思っています。どんな分野にしろ、均一化されてしまって、面白味に欠けると感じていました。だから、ファイナルオーディオデザインの製品を手に取ったとき、こんな常識外れでバカバカしいとも思えることをやるメーカーがまだ日本にあるんだと思って、本当にうれしくなりました。こういう製品が登場したことで、他のヘッドホン、イヤホンへの刺激になるといいなと思います。

「これでいいんだ」ではなくて「こんなのどうだ!」という製品をもっと見てみたいですね。

東儀秀樹氏実使用モデルイヤホン